UMJのアーティストはいかにして世界へ届いたのか?「邦楽を世界へ」の最前線とは

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あなたが今つくっているその曲は、東京ではなく、世界のどこかのチャートで火がつくかもしれません。

7月上旬、ユニバーサルシグマ デジタル&レーベル戦略部 本部長 深尾尚宏さん(以下、深尾さん)、Export Marketing シニアマネージャー 渡辺雄飛さん(以下、渡辺さん)、A&R1 チーフプロデューサー 松山大介さん(以下、松山さん)が来校。講義では、ふだん決して表に出ることのない、日本の音楽を世界へ届ける仕事のリアルが明かされました。

 

1.「海外ファンをどう育てるか 〜UMJアーティストの事例に学ぶ、アーティスト価値の広げ方〜」

冒頭、渡辺さんは自身の経験からメンバーへ教訓を贈りました。

  • スクールは卒業したほうがいい
  • 面白い仕事は、面白い人が作る
  • 夢と目標は違う

「例えば海外に『行きたい』はただの夢。海外に『行く』なら、夢が具体的になり、いつやるかが決まります!」

続いて、渡辺さんがサポートしているアーティストの海外展開について。すでに一定数の海外ファンが存在するアーティストの場合、そこからいかに現地ファンとの接点を生み出し、アーティストとしての価値を広げていくのか。現在進行形のケーススタディです。

講義では、日本を代表するある人気アーティスト(仮名[A])が、この約3年間で取り組んできた海外戦略について、時系列に沿って説明しました。まず手掛けたのは、タイアップを活用した認知拡大です。Aが世界的に人気のあるアニメとのタイアップ楽曲のリリースを控えるなか、チームは限られた宣伝予算を最大限に活用するため、「選択と集中」を行ったといいます。市場分析から、アニメとアーティスト双方の人気が重なる地域を重点市場に選定。さらに過去の事例から、放送開始後3か月間をプロモーションの「プライムタイム」と設定。施策は幅広い層にリーチできるデジタル領域に集中。その結果、同楽曲は重点地域において、Aの楽曲として過去最大の再生数を記録しました。

次の一手は、現地でのコラボカフェでした。その狙いは、「行動してくれる熱量の高い現地ファンの可視化と分析」と「そこから生まれる良質なUGCの拡散」。中国と韓国で9,500人超が来場し、現地SNSでは500件を超えるUGC(ユーザー投稿)が生まれました。

さらに会場では、ファンをより深く理解し、「彼らがAに何を求めているのか」を知るためにアンケートを実施。その結果、最も多かった要望は「ライブコンサート」でした。

しかし、海外公演はすぐには実現できません。そこで映画館でAのコンサート映像を上映。当初は思うように動員できなかったものの、毎年継続することで規模を拡大し、1か国から始まった上映エリアも年々広がっているそうです。

渡辺さんは、「海外のファンは、日本のアーティストとオンライン以外で接点を持つ機会が圧倒的に少ない。だからこそ、リアルな体験価値の提供が、アーティストとの絆を深めるのです」と解説します。

さらに今年からは、Aにとってアジア圏初となる物販イベントも実施。Aの世界観にこだわって会場を選定した韓国のポップアップでは、初日に約1,000人が列をつくり、合計6,000人が来場しました。

デジタルで認知を広げ、リアルな接点からファンを知り、そのニーズを次の施策につなげていく。Aの取り組みは、海外ファンとの関係を段階的に深めていくケーススタディとなっています。

「エンタメ業界で働くことはとても楽しいです。お客さまの興奮を肌で感じることができ、コンテンツの力がすべてを凌駕する瞬間があります。日本は世界一おもしろい国。一緒に広げていきましょう」

2.「海外のデジタル/SNS事情を読み解く」

続いて登壇したのは、深尾さん。海外攻略のステップを「配信(DSP)→発見(SNS)→拡散(文脈)→ファン化(継続的接点)」と整理しました。国別のDSP(デジタル音楽配信事業者)シェアはクイズ形式で出題され、韓国はローカル優勢、日本はApple Musicが強く、中国はローカルが独占。同じアジアでも、音楽との出会い方は国・地域ごとにまるで違います。「拡散」の実例として、藤井風『死ぬのがいいわ』を紹介。アルバムの中の1曲でしたが、配信から2年後、タイでのTikTok投稿をきっかけに死生観を表現した歌詞がZ世代を中心に支持されます。世界60拠点のネットワークでいち早く兆候を察知し、本人によるSNSでの感謝投稿、ライブ映像の切り出し公開と、熱を逃さず手を打ったことが世界的ヒットへつながりました。「あなたの曲は、どの国の、どのSNSで、どの文脈で発見され拡散されるのかをぜひ考えてみてください」と結びました。

3.「CULTURE MOVES PEOPLE. 世界基準で働くということ〜日本のカルチャーを世界へ届ける仕事」

過去4年間、日本人アーティストの海外展開プロジェクトの一環として、米 Republic

Records とのパートナーシップ業務を担う松山さんは、「世界には、世界基準がある」と話し、日米の音楽業界構造差について触れます。日本は1人の担当者が幅広く動き、意思決定が速い。一方アメリカは、A&Rも、PRも、徹底的に専門化された分業制です。「海外で戦うなら、専門性のある人のほうが強い」。さらに、アーティストがマネジメントを雇い、レコード会社と対等に渡り合う「アーティスト主導」の文化も紹介しました。車社会のアメリカでは、テレビ出演以上に「ラジオで楽曲をオンエアしてもらう」ことが難しい。だからこそ有効になるのが、Republic Records をはじめとする海外レコード会社や、アーティスト、プロ

デューサー、ブランドとの「共作・コラボレーション」。現地と接点を持つ人や会社と組み、文脈を共有しながらつくることに大きな意義があるといいます。海外展開の核心は「話題」ではなく「文脈」をつくること。この人はどういう人で、どういう思いで作られた音楽なのか?それを深く共有することが、ファンを生むきっかけとなります。「The world does not owe you a stage. 世界は、あなたにステージを用意してくれるわけではありません。でも、ちゃんとファンになっていただける場をつくることはできる。僕らの仕事は海外営業ではなくて、日本のアーティストを、世界のカルチャーとして届ける仕事です」

アーティスト志望だけでなく、マネジメントを志すメンバーも有益な情報を得ることができました。世界基準の視点を理解し、早い段階からグローバルな視点を持ち続けることが、バンタンミュージックアカデミー POWERED BY ユニバーサル ミュージック生にとって大きなアドバンテージとなるはずです。

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