ユニバーサル ミュージックとの産学連携 初回授業!音楽業界で、プロとして輝くための条件とは?
登壇したのは、ユニバーサル ミュージック合同会社より湖山講師・鈴木講師・菊池講師。
この日のテーマは、同社の歴史、そして音楽業界で生き抜くために必要となる"人間力"——EQ(非認知能力)まで幅広く語られました。
【1. ユニバーサル ミュージックの歴史をひもとく】
まず鈴木講師が、ユニバーサル ミュージックグループの歴史を解説。
起源は1888年、エミール・ベルリナーが発明した円盤式蓄音機にさかのぼります。
「エジソンは円筒型でしたが、ベルリナーさんは円盤型——今でいうターンテーブルのようなものを作りました。彼が『ドイツ・グラモフォン』というレーベルを立ち上げたのが始まりです」。
その後、アメリカのMCA、イギリスのEMIなどそうそうたる音楽会社との統合・合併を経て、現在のユニバーサル ミュージックグループへと成長。
現在は60カ国で展開し、世界最大の楽曲数を誇ります。
日本法人は原宿・神宮前にオフィスを構え、2025年にはマネジメント会社「A-Sketch」がグループにジョインするなど成長を遂げています。
日本の市場規模は世界2位を誇り、ユニバーサル ミュージックジャパンには、Ado、藤井風、Mrs.GREEN APPLEなど人気アーティストが所属しています。
【2. ビジネスを支える「4本の柱」】
湖山講師「蓄音機の時代からデジタル、そして今のAIの時代まで、『ヒットを出すこと』の価値は100年間変わっていません。
僕も月5〜6回ほどライブに行きますが、アーティストの才能は本当にすごいです。
ファンが生き生きしているのを見ると、自分のことのように誇らしくなります。
社員たちは、ヒットを生み出す価値を原動力として頑張っています。プロの世界に入るのであれば、お金の話は避けて通れません。我々は慈善活動ではなくビジネスとして、ヒットを出して売上を立てる必要があります」
現在、同社の収益を支えるのは以下の4領域。
・ デジタル……現在の主戦場。ストリーミングが世界的に急成長中。
・ フィジカル(CD・レコード)……アメリカでは市場の10〜20%まで縮小しているが、日本はいまだ50〜60%を占める。これは「ボーイズグループ、アイドルグループなどのファンビジネスが非常に強いためです」。
・ AVC(ライブ・グッズ・ファンクラブ)……ライブ、グッズ販売、ファンクラブ収益が大きく伸長。2023年には、東京・原宿にアーティストとファンのつながりを深める場としてコンセプトストア「UNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKU」をオープン。
・ 海外……「韓国は、国策として音楽輸出に成功しています。日本発のアーティストでヒットを増やす取り組みを強化しています」
【3. キャリアを築くためのアドバイス】
<チャレンジの大切さ>
湖山講師「やりたいことは、今すぐやってください。バンタンミュージックアカデミー POWERED BY ユニバーサル ミュージック特別顧問・布袋寅泰さんが『60歳になって、いくつもの夢を叶えることができた』とおっしゃっていました。何歳からでも新しいことを始められます。ぜひ、今の情熱を忘れないでください」
<生成AIについて>
湖山講師「AIによる海賊版は由々しき問題ですが、ツールとしては積極的に使いましょう。ただし、AIの回答を鵜呑みにせず、本当にそうなのか疑う『思考力』を持ってください。AIを活用するけれど、『最初のインプット』と『最後の修正』は自分自身で行うというアーティストもいます」
【4. 組織の強みと職種について】
湖山講師
「組織の話を少しします。ユニバーサル ミュージックでは、発売から一定期間が経つと楽曲は旧譜となり「カタログ曲」に分類されます。こうした資産をどのように売るかを考える「USM」という専門チームに移管されます。一方でレーベルの役割は新しいアーティストや新曲を生み出し続けること。だからこそ常に新たな才能を追い続ける。ここが当社の強みです。」
菊池講師
「社内のレーベル同士が競い合っていることもユニバーサルミュージックの強さの一つです。新人の獲得などでも競争性があるからこそ、会社全体が活性化しています。職種としては、制作のA&R、宣伝、そしてマーケティングプランナー(MP)などがあります。最近はデジタルチームの重要性が増しており、半年後には通用しなくなるような激しい流行り廃りの中で戦略を立てています。ライセンス事業では、アパレルブランドとのコラボレーションや、花火大会とのタイアップなども手がけています」
【5. 4つの行動指針——Ahead/Creative/Trust/Respect】
続いて、鈴木講師・菊池講師が、ユニバーサル ミュージックの経営理念「人を愛し、音楽を愛し、感動を届ける」を紹介し、大切にする4つの行動指針を解説。
Ahead(先んじて自ら考え行動する)
「単に言われたことをやるのではなく、なぜこれをやるのかという目的意識を持つことです」と鈴木講師。
例えば文化祭で焼きそばを作ることになったとき、ただ言われたとおり材料を買ってくるのではなく「なぜ文化祭をやるのか?」「どうすればイベントがもっと盛り上がるか」という視点から、自分に何ができるかを自ら提案し、動くことは「Ahead」です。
Creative(工夫し、創造する)
ユニバーサル ミュージックジャパンが手掛けた「ぼくらの春曲」プレイリストキャンペーンは、ある社員の「季節ごとに聴かれる曲は違うはずだ」という気づきから始まり、数億円規模のビジネスへと成長。
鈴木講師「情報を集め、常に頭の片隅で考え続けることがCreativeです」
Trust(誠実であり、信頼を築く)
鈴木講師「約束を守る、期日を守る、ミスを正直に認める。当たり前のことですが、こうした誠実な行動が、信頼を築きます」
Respect(違いを受け入れ、尊重する)
菊池講師は音楽のジャンルレス化を例に挙げ「自分とは違う感性や価値観を持つ仲間を認め、そこから学ぶ姿勢こそが、新しいエンターテインメントを生む原動力になります」と語りました。
【6. 「IQだけでは、本当の成功には結びつかない」】
後半のパートでは、「IQとEQ」のトピックについて言及。
湖山講師
「専門知識やスキルといったものは『IQ』の領域です。もちろん土台として不可欠ですし、一生勉強し続けなければならないものです。しかし、IQを高めるだけでは、仕事での本当の成功には結びつきません」。
ユニバーサル ミュージック合同会社 社長兼CEO・藤倉尚氏の言葉を引用し、「役員として必要なものは何か、という問いに対して、彼は『仕事ができるのは当然だが、最後は人柄だ』と断言しています」。
湖山講師自身も弁護士時代、「強く交渉できないこと」をコンプレックスと感じていたそう。
しかし今は、「優しく、相手の話を丁寧に聞けること」はむしろ自身が誇る強みだととらえ直しているとし、「他人と比べるのではなく、自分自身の『種』を見つけて育ててほしいです」とメッセージ。
【7. 在校生メンバーとの質疑応答】
講義後半は、在校生メンバーからの質疑応答の時間が設けられました。たくさんの挙手があり、双方向での活発なコミュニケーションが行われました。
Q. レコードの人気が再燃していますが、どのように見ていますか?
湖山講師
「アメリカではフィジカル市場の一定の割合がアナログレコードという、確かなポーションになっています。個人的な見解となりますが、日本でもレコードを『所有する』文化は今後も続くと思います」
Q. アーティストとして「成功」するのは難しい時代と感じています。そもそも成功とは何でしょうか?
鈴木講師「難しい質問です。商業的な大成功もあれば、自分の音楽で誰かに感動を届けるという成功もあります。大事なのは、自分がどうありたいか、ご自身の成功を自分で定義することです」
Q. レーベルに所属することと、個人で活動することのメリット・デメリットを教えてください。
菊池講師
「個人でSNSなどから発信できる時代ですが、どうしても広がりに限界がある印象です。レーベルには蓄積されたノウハウと、専門性の高いチームがあります。そして何より、アーティストが抱える孤独を一緒に分かち合い、価値を作り上げていくことができる。それがレーベルならではの強みだと思っています」
Q. コンポーザー志望ですが、生成AIの台頭でプロへの門戸は狭まりますか?権利関係が曖昧なままAI作品が出回っている現状にも不安があります。
湖山講師
「誰かが心血を注いで作った楽曲をAIが無断で学習し、似たような曲を生成して利益を得る—これは海賊版と同じ大変な問題です。いま、まさに議論が進んでいる段階です。クリエイターの権利が正当に守られ、対価が支払われる仕組み作りを、という議論が進んでいます」
鈴木講師
「僕の知り合いのマスタリングエンジニアは『AIに取って代わられることはない』と言い切っています。アーティスト自身が『最後は人の手を通したい』と願っているからです」
【8. まとめ「今日という日が、これからの人生でいちばん若い日」】
講義の最後、湖山講師はこう語りかけました。
「好きなことが必ずしも得意なこととは限りません。でも、得意なことをやっているうちに、それがどんどん好きになっていくパターンもあります。壁にぶつかったら、得意なことにも目を向けてみてください。
『Ahead』の精神で、やりたいこと、やるべきことに今すぐ着手してください。若さは無限ではありません。今日という日が、これからの人生でいちばん若い日です。応援しています!」とエールを送りました。
音楽ビジネスの最前線に立つ3人は、基礎的技術を磨くことと並行して、在学中に「人間力」を高める大切さをメンバーたちに伝えました。
【PROFILE OF SPEAKERS】
湖山 充講師(ユニバーサル ミュージック合同会社/執行役員 リーガル・アンド・ビジネス・アフェアーズ本部兼 People, Inclusion & Culture本部 人材開発部担当)
弁護士としてキャリアをスタート。法律事務所勤務を経て、企業の法務部門に転職。2021年にユニバーサル ミュージックに入社し、執行役員として、現在は法務部門に加え、採用・人材育成を含む幅広い業務を担当。
鈴木 仁講師(ユニバーサル ミュージック合同会社/People, Inclusion & Culture本部 人事部 HRビジネスパートナーグループ マネージャー)
2022年にユニバーサル ミュージックに入社。前職は小売業で、販売員・エリアマネージャーを経て人事部門へ。現在はHRビジネスパートナーグループにて洋楽レーベルとバックオフィス部門を担当。事業部と一緒に「人」を通じて事業を強くしていくことをミッションに、社員一人ひとりが力を発揮できる環境づくりをサポートしている。
菊池 哲也講師(ユニバーサル ミュージック合同会社/People, Inclusion & Culture本部 人事部 HRビジネスパートナーグループ チーフHRスペシャリスト)
人事キャリア約15年。前職の日系メーカーでの人事経験を経て、ユニバーサル ミュージックに入社。中学時代からヒップホップ・R&Bに親しみ、音楽への情熱をキャリアにつなげた。現在はHRBP(HRビジネスパートナー)として邦楽レーベルを担当し、現場に入り込んで課題解決を行う。